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ブックマークに溜まった怖い話を集約
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『呪いの暴走』3/4
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?156

461 : ◆J3hLrzkQcs :2007/01/28(日) 00:38:44 ID:uSB9VWyu0
おっさんと出会ってから半年以上が経っていた。
相変わらずおっさんの正体は分からない。
どこの誰なのか?仕事はしているのか?妻や子供はいるのか?そもそも人間なのか?聞きたいことが山ほどあった。
おっさんは「僕のことは知らないほうがいい」と言っていたが、少しくらいなら教えてくれてもいいのに…。
そう思ってた。


話が飛んでしまって申し訳ないが、僕は母方の叔父のところにお世話になっている。
僕の両親が交通事故で死んでしまったからだ。
葬儀の後に親戚みんなで集まり、誰が僕の面倒を見るか?それを決めるために話し合った。
そのとき、なぜか父方の親戚は集まりが悪かったらしい。
聞けば、不慮の事故や病気で、次々と死んでしまっているそうな…。
一応集まるには集まるんだが、寝たきりの祖母を抱える祖父だったり、精神病の子供がいる伯父だったりと、
とても養子を育てる余裕なんかない人たちだった。
そんなわけで、母方の叔父が僕をもらい受けることとなったのだ。

今でこそ僕に冷たい叔父だが、最初のころは本当に優しかった。まるで別人かと思うくらい。
休日には必ずどこかに連れてってくれたし、欲しかったおもちゃだって、すぐ買ってくれた。
じゃあいつから叔父と僕は、こんなに冷め切った関係になってしまったのか?
原因は僕にある。僕が叔父に全然なつかなかったから…。
叔父は他人の子供にもかかわらず、まるで実の子供のように僕をかわいがってくれた。
しかし、わけも分からないまま叔父の家にいきなり連れて来られ、大好きだった両親にも会えない僕は、
いつも泣き叫んでばかり。
真夜中に突然泣き始めて、寝ていた叔父を起こすこともしばしばあった。
「ねぇ、お母さんは?お父さんはどこ?会わせてよ、おじちゃん!どこにいるの?ねぇ…」
腫れた目をこすりながら、嗚咽交じりで叔父にすがりつく僕。
「お母さんとお父さんはね、どこか遠いところに行っちゃったんだよ」
「嘘だ!おじちゃんの嘘つき!お母さんとお父さんを返せ!」
そして大声を上げてまた泣き出す。頭をおさえて黙り込んでしまう叔父。
そうやって日数を重ねるうちに、僕は叔父にまったく心を開かなくなっていた。
また、叔父を悪者だと思い込み、ついには叔父が両親を殺した人殺しと勝手に決め付けさえした。


462 : ◆J3hLrzkQcs :2007/01/28(日) 00:40:13 ID:uSB9VWyu0
そして事件が起きる。
独身だった叔父には交際相手がいた。
自分はあの子に嫌われている。あの子は愛情に飢えている。このままだとあの子はダメになってしまうだろう。
あの子には愛情が必要だ。母親がいればきっと変われるはず。
そう叔父は考えていた。そして結婚を決意する。
「(僕の名前を呼んで)この人が新しい母親だよ」
叔父は、交際相手を僕に紹介した。だが荒みきっていた僕には、その人を母親と思うことが出来なかった。
うらめしそうに睨み付ける。
「死ね」
その瞬間、叔父のビンタが飛んできた。泣き出す僕。
「なんてこと言うんだ!」と僕をしかりつける叔父に、僕はひたすら「人殺し!」と叫び続けた。
それからだ。叔父が僕に冷たくなったのは…。
今でも叔父は独身である。あの事件がきっかけで、交際相手とは別れてしまったらしい。

叔父は仕事がいそがしいのか、めったに家に帰ってこなかった。
僕には、叔父の家が広すぎた。
友達の家でご馳走になった時、家族団欒の光景を見て、泣いてしまったことがある。
リビングにはロボットの形をした小物入れがあって、お金が入れてある。
そのお金で、スーパーでお惣菜を買ったり、外食したりしていた。
僕にはそれが当たり前の日常だった。ずっとそうやってきた。

一人で朝食を済ませ、学校に行くための仕度をする。
玄関の戸を閉めると「よぉ」と呼ばれたので、振り返るとおっさんがいた。一ヶ月ぶりである。
何にもないときに現れるのは初めてだった。
「元気ないな。どうしたんだ?」
おっさんは心配そうだ。
僕は最初こそ黙っていたが、あまりにもおっさんがしつこく聞くので、
今まで叔父と自分にあったことを思わず話してしまった。
話している間、おっさんはずっと黙ったまま僕の話を聞いてくれてた。
全部話し切ると、胸のつっかえが取れたような感じがした。
おっさんはずっと下を向いて考え込んでいる。


463 : ◆J3hLrzkQcs :2007/01/28(日) 00:44:01 ID:uSB9VWyu0
「おじさんってさ。家族いるの?」
僕は聞いてみた。するとおっさんは顔を上げ、ニコッと笑うと「いるよ」って答えてくれた。
絶対に独身だと思っていたから、すごい意外だった。

僕が学校に向かうと、おっさんも付いてきた。
サングラスに黒スーツという、誰もが目を止めてしまう格好だったので、
さすがに一緒に歩くのは勘弁して欲しかった。
周りにどんな目で見られるか分かったもんじゃない。
しかし、すれ違う人は、まったくおっさんに気付かない様子だった。不思議だ。
たまに散歩中の犬が威嚇するくらいで、みんな気にも留めてない感じだった。
他の人には見えてないのだろうか?
「おじさんって幽霊なの?」
思わず聞いてみる。
「幽霊か人間かって言われれば人間だよ」
「どういうこと?」
「人間が生むのは人間だけじゃないってことさ。」
言ってる意味が分からないので首をかしげる僕。それを見ておっさんは笑う。
「つまり式神だよ」
おい。またそのパターンかよ。
おっさんは腕時計を見ると、「まずい。そろそろ行かなきゃ」と言い残し、いきなり走り出した。
呼び止める暇もなく、ひょいっと路地の角に消えてしまう。
僕はあわてて後を追い、角を曲がったが、そこにはもうおっさんはいなかった。
隠れてそうな場所を探すが、見つからず。

僕はゆっくり息を吐きながら、今の出来事を何気なく思い返してみる。
頭をポリポリとかきながらふけっていると、あることに気付いてしまった。
いや、正確に言うと、気付いているのに気付かないふりをしていた。
たった三回しか会っていないのに…。明らかに不審者なのに…。
なのになぜ僕は、『おっさんがお父さんだったらいいのに』なんて思ってるんだ?いったいなぜ?
僕の気をひこうと必死だった叔父の苦労もむなしく、僕は決して叔父を『お父さん』と呼ぶことはなかった。
それなのに…。どうして?
あまりにも理不尽すぎる。
悶々とした気持ちのまま、僕は学校に向かった。


468 : ◆J3hLrzkQcs :2007/01/28(日) 03:28:10 ID:uSB9VWyu0
週末のこと。
朝から夕方まで部活で、そのあと進学塾というスケジュールを何とかこなした僕は、
くったくたに疲れて、家に帰る途中だった。
もう季節はすっかり冬になっていて、吐く息も白い。乾燥した冷たい風に吹いている。
そのせいだろうか、喉が痛い。
そんな寒い夜の道を、月明かりが照らしていた。
「おい」
いきなり背後から声が聞こえたので内心ヒヤッとしたが、聞きなれた声だったので安心した。
おっさんが立っていた。
どうやら家まで送ってくれるそうだ。
一緒に歩きながら話していると喉から痰が出てきたので、道端にペッと吐いた。
「唾を吐くな」
ハッとしながらも、自分のやった行為を反省し、素直にすいませんとあやまる僕。
「天に唾を吐くようなもんだぞ。血ほどすごくはないが、唾だってかなりの力を秘めている。
 下手にそこらじゅうに吐いてると、自分の顔に戻ってくるぞ」
そう言うとおっさんは、吸っていたタバコを指でピンとはねた。
「ねぇ、おじさん?」
「ん?」
「じゃあ…逆に聞くけど、タバコなら道に捨ててもいいの?」
「あ、いけね」と言いながら、おっさんは捨てたばっかりのタバコを拾った。

おっさんは、それからもごく稀ではあるが、僕に会いに来てくれた。
正体は相変わらず謎のままだったが、それでも分かることは多々あった。
まず、おっさんには決まって数分に一回のペースで、時間を見る癖がある。
そして時間になると、いつもそそくさと走り去ってしまうのだ。

おっさんは僕の生い立ちをはじめ、あらゆることを不気味なくらい知り尽くしていた。というより、知り過ぎていた。

たいていのことなら何でも答えてくれる。例えば、明後日の競馬のレースはこの馬が一着になるとか。
後日、見事に的中して、なんで中学生が馬券買えないんだと心底悔やんでたのを覚えている。

もっとも今は今で、もっといろんなことを聞いておけばよかったと後悔しているけれど。
ほとんど脅迫に近い感じで口止めされていたので、
あの当時はこのことを、こんな形で人に話すとは夢にも思ってみなかった。
だから、どうせ聞いても人に言えないんじゃ知る意味がないって思って、あまり質問しなかった。
質問するにしても、おっさんのことばかり。それが心残りだ。


549 : ◆J3hLrzkQcs :2007/01/29(月) 00:35:07 ID:q6VrRK2X0
「おじさんって仕事してるの?」
「してるよ。式神だからね」
愛情に飢えていた僕は、おっさんにベッタリだった。友達と言うより父親みたいな存在。
おっさんも、そんな僕に照れてこそいるが、まんざらでもないようだ。
「ホントはね、何にもないときに、こうやって君に会っちゃいけないんだよ。上の決まりでさ」
上ってのは、式神を指揮する司令塔らしい。正義の秘密結社でもあるのか?
詳しく聞こうとするも、「君を巻き込みたくない」との理由で教えてくれなかった。

おっさんにはいつも時間がなかった。時間になると逃げるようにいなくなってしまう。
最初こそ追いかけてたが、路地を曲がったところで必ず消えてしまうので、もう追いかけることはしなかった。
おっさんは秒単位で動いているビジネスマンのように、しょっちゅう時間を気にしていた。
なんかいろいろとあるみたい。

そんなある冬の出来事のこと。
その日の部活は雨が降って中止で、進学塾の授業もない。
冷え切った寂しい家に一人でいることが嫌な僕は、友達の家に遊びに行く。
友達は「親がいないお前がうらやましい」と言っていたが、僕だって「親がいるお前がうらやましい」と思っていた。
帰る時間になったので、いそいそと友達と別れを告げ、自分の家に戻る。
あたりは真っ暗。見えない恐怖におびえながら、いつの間にか僕は早歩きになっていた。

マセラティが向こうに見えた。
ものすごいスピードでやって来る。このあたりでマセラティに乗っているのは、僕の知るところ一人しかいない。
やっぱりそうだ。乗っていたのは、おっさんだった。
あれ?マセラティは、止まることなく過ぎ去ってしまった。
気付いてなかったのかな?疑問に感じるも、どうしようもない。
遅れて数秒後、大勢の人の泣き叫ぶような悲鳴やうめき声が聞こえ出した。
びっくりしてふと前方に目をやると、なにか得体の知れない真っ黒いものが見える。
マセラティの後を追うように、こっちに迫って来る。
じっと凝らして、それを見てみるとゾッとした。それはたくさんの人影だった。
人影が道をびっちりと埋め尽くしている。
映画『ゴースト ニューヨークの幻』に出てくる、地獄の使者そのものだった。


550 : ◆J3hLrzkQcs :2007/01/29(月) 00:38:36 ID:q6VrRK2X0
その数たるやすごいもので、通り過ぎると同時に砂埃が舞い上がるほどだ。とてもじゃないが、数え切れない。
ミミズがうねうねと動いたような、そんなまがまがしいオーラをまとわりつけた人影は、
逃げられずに固まっている僕を飲み込み、何の危害を加えることもなく行ってしまった。
なんか知らないが助かった…。腰が抜けてしまい、足に力が入らない。滝汗をかいていた。
文面じゃうまく伝わらないと思うが、あれは僕の呪いなんかより、もっとやばいものだと直感した。
次元そのものが違う、圧倒的な存在感を感じる。
ただ目撃しただけなのに、尋常じゃない恐ろしさだった…。

それから数週間。
次におっさんを見たのは、体育のサッカーをやるために外に出たとき。
ふと何気なく空を見たら、はるか向こうの空におっさんが立っていた。浮いている。
みんなに教えたかったけど、いかなることがあっても言ってはいけないと口止めされてたので
(まあ、今こうして言っちゃってるわけだが)一人で眺めていた。
おっさんは、ここでも僕に気付いてない様子だ。
すると、そのおっさんにどす黒い雷雲が向かってくるのが見える。
例の人影たちだ。おっさんを襲おうとしている。
バチン!
おっさんの手が光ると、おなじみの爆竹音がこだました。
ズドン!
野球のボールをミットでキャッチするようなそんな音が、立て続けにすると同時に、雷雲が光りながら散った。おっさんの攻撃が当たったのだろう。
とにかく、何がなんだか…よく分からない。出来の悪い特撮映画でも見ているのだろうか?
雷雲は崩れてこそいたが、勢いを衰えることなく、そのままおっさんに襲いかかる。
ここでボールが僕のところに来たので、あわてて視線を足元に戻した。
やはり僕にしか見えていないのか?
あれほどの音がしたにもかかわらず、誰一人として気付いていない様子だ。
ボールを蹴り返し視線を空に戻すと、時すでに遅し。おっさんも雷雲もいなかった。


551 : ◆J3hLrzkQcs :2007/01/29(月) 00:40:51 ID:q6VrRK2X0
ようやくおっさんが僕に会いに来てくれたのは、それから数日後のこと。
早朝の朝練に行くために、身支度を整えて家から出ると、背後から声がする。
振り返ると、おっさんが立っていた。
ただいつもと違う。おっさんは、かなり疲れ切ってる様子だ。スーツもよれよれ。
どうにも会話が弾まない。おっさんも無理して作り笑いをしているのが分かる。
帰ってしまう前に、あの人影について聞かなければ…。
「やばいな、長居しすぎた。早く行かないと」
そう言い残し、まさに帰るそのとき。意を決して僕は、おっさんに聞いてみた。
「おじさんを追いかける人影って何なの?」
おっさんは驚愕の表情の浮かべ振り返った。動揺を隠せない様子だ。
「見てたのか?」
こっくりと頷く。
見た内容を詳しく説明しようとしたが、「それ以上言うな」と一喝されて、黙るほか無かった。
おっさんは大きく、ゆっくりとため息をついた。
そして、そのまま押し黙ってしまうので、二人の間には無言の沈黙が流れる。
「あれって悪霊なの?」
「違う。そもそも君は、霊感がないから見えないだろ?あれはね、もっとやばいもんだ」
じゃあいったい何なんだ?聞いても、それ以上は教えてくれなかった。
「もう君とは会わないようにしよう」
いきなりおっさんが切り出す。
言わなきゃよかった。そう思った。興味本位で聞いてしまったことを、すごい後悔した。
「大丈夫。何かあったときは、ちゃんと助けに行くよ」
そう言うとおっさんは、靴音を響かせながら歩き出した。
引き止めたかったが、ショックで喉が締め付けられたのか、声が出なかった。

ふいにあたりの気配が変わり始める。
おっさんがまさに向かおうとする先にある家の垣根が、風も無いのにざわざわと音を立て始めた。
キーンと耳鳴りがする。
「まずいな…。囲まれた」
そう呟きながら、あたりを見渡すおっさん。何も見えないけど、よからぬ何かの気配を肌で感じる。
「すまない、少し驚かすと思うが気にしないでくれ」
どういう意味か説明する間もなく、おっさんは呪文を唱えると、その場からふっと消えてしまった。
驚くよりむしろ僕は、突然いなくなる謎が解けたことで興奮していた。


552 : ◆J3hLrzkQcs :2007/01/29(月) 00:41:26 ID:q6VrRK2X0
ただならぬ気配は、おっさんがいなくなった後もまだ残っている。
あたりの家々の塀の隙間から、真っ黒いスライムのようなものがはみ出て、
真夏のアスファルトの蒸気のごとく、ゆらゆらと景色を歪めていた。
それは何かするわけでもなく、ただそこに在るだけ。とはいえ、気持ち悪いので足早にそこをあとにする。

幽霊が見えない僕が、なぜか見える人ならざるもの。
もしかして?僕の脳裏にあることがよぎった。
おっさんも呪われた一族の末裔なのか?
そう考えると、何もかも辻褄が合う。
なぜ僕のことや先祖のことを知っているのか?なぜ僕を助けるのか?
今までバラバラになったジグソーパズルが、ピシピシとはまっていく感覚。
鼻の頭をつまみながら、眉にしわを寄せ物思いにふける。
いくら勉強しても分からないことってあるんだな…。
そう思いつつ僕は、学校に足を向けた。

「『呪いの暴走』4/4」に続く
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